運輸業に必要なSAS(睡眠時無呼吸症候群)対策とは?
- 広子 木村
- 4月21日
- 読了時間: 4分
1. はじめに:なぜ運輸業にSAS(睡眠時無呼吸症候群)対策が注目されているのか
近年、健康系のテレビ番組で SAS や CPAP(シーパップ:SAS治療機器) が取り上げられることが増えています。厚生労働省の調査や各種報道でも、SASが原因と見られる事故や健康被害が取り上げられるなど、社会的な問題になりつつあります。
加えて運輸業では、SASを起因とした運転中の事故を防ぐため、国交省の啓発活動や、業界団体による検査の推奨、助成金の活用が広がっています。そのため、「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」という言葉は、すでに広く知られるようになりました。
従業員の健康管理や事故防止を担う運輸業の管理者にとって、SASへの理解と対策は避けて通れないテーマです。社員の労働環境や安全運転管理を考えるうえでも、SASの基本を解説します。
2. SAS(睡眠時無呼吸症候群)の定義
SAS(Sleep Apnea Syndrome)は睡眠中に気道(鼻やのど)が狭くなり呼吸が弱くなったり、止まってしまう病気です。十分な睡眠がとれないため、居眠り運転による重大な事故、高血圧、脳卒中、心臓病の危険が高くなります。
閉塞型SAS: 気道の通りが悪くなる(物理的に塞がる)ことで起こる
中枢型SAS: 脳からの呼吸指令がうまく出せないことで起こる
このうち閉塞型が主流とされており、肥満や顎の形状、扁桃肥大などが要因となることが多くあります。
また、成人男性の約3~7%、女性の約2~5%に見られ、男性では40〜50代が半数以上を占める一方で、女性は閉経後に増加すると言われています。
ドライバー全員にSASスクリーニング検査を実施している企業を母集団とした当NPOの調査では、運輸業ドライバーの約12.2%がSASの精密検査が必要と判定されています。
3. 主な症状と健康リスク
日中の強い眠気・集中力の低下
夜間の無呼吸により睡眠が浅くなるため、昼間に異常なほどの眠気が襲います。運輸業では事故防止の観点から、特にこの眠気に注意が必要とされています。
大きないびき
気道が狭くなることで、いびきをかきやすくなります。
起床時の頭痛や倦怠感
酸素不足が続きやすいため、朝スッキリ起きられないことがあります。
さらに、SASを放置すると、高血圧・心疾患・脳卒中などのリスクが高まるといわれています。
4. SASが社会に与える影響

交通事故や労働災害
日中の強い眠気が原因で、運転中の居眠りや注意力の散漫が起こり、大きな事故につながるケースもあります。
生産性の低下
従業員が慢性的な疲労や眠気を抱えていると、仕事のパフォーマンスが著しく低下する可能性があります。
医療費の増大
合併症が進行すると、結果的に健康保険組合や企業の医療費負担が増えるおそれがあります。
5. 運輸業として知っておきたいポイント
早期発見・早期対策が重要
社員の睡眠状況を把握するとともに、業務上運転を行うドライバー全員に対し、定期的(おおむね3年に1回)のスクリーニング検査を実施することが重要です。
産業医や専門機関との連携
企業内の産業医や、外部の専門機関と協力し、検査や治療を支援する体制を整えましょう。
安全管理上のリスク回避
特に運輸業では、重大事故につながるリスクがあるため、対策は必須とされています。
6. まとめ
SAS(睡眠時無呼吸症候群)は、運輸業にとって従業員の健康と企業の安全管理に直結する重要な問題です。まずは基礎知識を押さえたうえで、社内における睡眠管理や検査体制の構築を検討することが、企業にとっての第一歩となります。
次回以降の記事では、企業が行うべき対策について、さらに詳しく解説していきます。