SAS対策を企業で導入すべき理由:SASのリスクとSAS対策コスト
- 広子 木村
- 7月9日
- 読了時間: 4分
はじめに:企業が抱えるSASリスク
従業員の睡眠不足や日中の強い眠気は、業務効率の低下だけでなく眠ってしまうことで重大事故のリスクを大きく高めます。
突然意識を失う睡眠障害である SAS(睡眠時無呼吸症候群) は、自覚しにくいまま進行し、運転や機械操作中に意識を失って致命的な事故を引き起こすこともあります。
運転中の事故は、従業員や周囲の人がケガを負ったり命を落とす可能性など、人命の損失に直結する取り返しのつかない重大な問題です。加えて労災や訴訟による経済的な損害、社会的責任を問われるリスクも避けられません。
SAS対策は、事故を未然に防ぎ、従業員の命・企業の信頼・社会の安全を守るための優先課題と言えるでしょう。
※2025年4月1日施工の「自動車事故報告書等の取扱要領」の一部改正で、発生した事故とSASの因果関係の把握のため、事故前後のSASスクリーニング検査の受信状況を報告することを明示するように改正されました。
SAS対策導入のメリット
1. 重大事故の未然防止
SAS対策の最大の価値は、命に関わる事故を防ぐことにあります。特に、運輸業では予防策として不可欠な取り組みです。
2. 従業員の健康維持と生産性向上
SASの治療により、日中の眠気や集中力の低下が改善され、パフォーマンスが向上します。従業員の健康を気に掛けることはモチベーションや定着率の改善にもつながります。
3. 企業のリスク管理・イメージ向上
健康経営や安全配慮への取り組みとして評価され、社外からの企業イメージの向上につながります。また、トラック協会のSAS対策マニュアルなどのガイドライン遵守にもつながります。
導入にかかるコストと期待効果

《企業の主なコスト》
SASスクリーニング検査費用
SASスクリーニング検査を全員に実施するオペレーションコスト
(負担する場合)SASの診断がついた従業員の通院費用
《得られる効果》
事故・労災の発生件数の減少
適切に治療を行うことで、将来の医療費・保険料の負担軽減
従業員の離職率の低下、エンゲージメント向上
特に注目すべきは、「未然に事故を防ぐことで回避できた損失」の大きさです。万が一、SASに起因する死亡事故や訴訟が発生すれば、金銭的・社会的な損害は非常に大きく、その事故の発生を防ぐことが一番のメリットでしょう。
コスト削減の工夫
✔ 専門検査機関の活用
専門のSASスクリーニング検査機関を利用することで、短期間に多数の従業員を一括で効率的にスクリーニングでき、コストも抑えやすくなります。
✔ 補助金・助成制度の活用
トラック協会など、所属する運輸業界団体によっては、SAS対策への助成制度が設けられている場合があります。
✔ 分割検査の実施
全従業員を対象とした検査が重要ですが、業務への影響から一斉実施が難しい場合には、従業員をおおよそ1/3ずつに分けて毎年実施する方法も有効です。
これにより、継続的かつ計画的に全社的なスクリーニング体制を構築することができます。
事例:従業員目線のSAS対策導入事例
運転士約1,700名を抱える【株式会社エス・ディ・ロジ】では、過去に慢性疲労からくる睡眠不足の運転士による単独事故がおきました。これをきっかけに、睡眠がとれていないことを理由とした事故の対策が必要と考え始め、全社的なSAS対策を導入しました。
SAS治療中の運転士が介護との両立による慢性的な睡眠不足で、運転中に意識が飛び単独事故が起きました。これを受け、全運転士に対して3年に1回のSASスクリーニングを実施。疑いの強い方はしっかりと治療につなげています。
「今回検査をしていなければ、SASによる突然死だったり、あるいはSASが起因の事故を起こしていたかもしれず、自分の命が守られただけではなく家族にも迷惑をかけず、他者に怪我を負わせることにもならず、本当にこの検査を受けてよかった」といった声も運転士の方から上がっており、安全意識の向上と事故防止の体制強化に成功しています。
まとめ:今こそSAS対策で事故を防ぐ
企業にとってSAS対策は、労災や重大事故のリスクを大きく下げることができる、実効性の高い手段です。
検査に費用はかかりますが、その対価として得られる「従業員の安全」と「企業への信頼」は、何にも代えがたい価値と言えるでしょう。
ぜひこの機会に、SAS対策の導入をご検討ください。

