SAS対策、何から始める? 法人向けSAS対策導入のポイント解説
- 広子 木村
- 7月18日
- 読了時間: 5分
はじめに
睡眠時無呼吸症候群(SAS:Sleep Apnea Syndrome)は、社員の健康だけでなく、業務中の事故リスクにも直結する重要なテーマです。本記事では、法人としてSAS対策を開始する際に押さえておきたい基礎知識を、わかりやすく解説します。

1. SAS対策の目的
SAS対策とは、社員が睡眠時無呼吸症候群のリスクを抱えていないかを早期に発見し、適切な対応につなげる取り組みです。日中の強い眠気や就寝中のいびきなどの目立った自覚症状がない場合でも、実際に検査を行うと高リスクと判明することがあります。
企業にとってのSAS対策導入メリット
日常では見えにくいSASリスクを可視化できる
高リスク者は治療により重大事故や労災の予防につながる
従業員の健康管理の一環として取り組める
2. 法人導入で押さえるべき3つのステップ
① 調査・計画立案
社員数や職種などをもとに、運転業務のある部署を中心に対策が必要な部署を洗い出し、検査の対象範囲(人数や部署、年間スケジュール)や実施方法を検討します。悩む場合はこの段階で専門の検査機関に相談し、アドバイスを受けるとよいでしょう。就業規則等の変更が必要な場合も、このタイミングで進めます。
② SASスクリーニング検査の実施
専門の検査機関と連携し、対象者に対して検査キットによるSASスクリーニング検査を実施します。
③ 結果の分析と通院フォロー
検査結果をもとに、必要な社員には医療機関での精密検査や治療を案内します。治療は継続的な対応が必要なため、通院状況の把握も含めた支援体制を構築することが重要です。
※国土交通省から「SAS対策マニュアル」が公表されていますので、こちらもご参照ください。https://www.mlit.go.jp/common/001101506.pdf
3. 検査の種類(SASスクリーニング検査・精密検査)
SASスクリーニング検査(検査キットによる簡易検査)
※スクリーニング:病気の「可能性」を把握するための初期検査。診断ではなく、健康診断のように「要精密検査」のような結果を判定します。
自宅や職場で使用できる検査キットを用いて、呼吸状態や経皮的動脈血酸素飽和度(SpO₂:血液中の酸素の量を表す指標)を記録します。費用負担や時間の制約が小さく、広く行う初期段階のリスク把握に適しています。
全社員を対象に広く実施するのが望ましい
キットの準備や回収業務など一部会社が主導となる必要がある
SAS精密検査(PSG:ポリソムノグラフィー)
スクリーニング検査でリスクが高いと判定された社員が対象です。医療機関に一泊入院し、脳波・心電図・呼吸・筋電図などを詳細に測定します。
正確な診断が可能で、SASと診断されれば治療に進む
病院での一泊検査が必要となるため、費用負担や時間の制約が大きい
➡ 法人対応としては、まずスクリーニング検査を広く行い、必要に応じて精密検査へつなげるのが一般的な流れです。
4. 検査費用
検査費用(目安)
SASスクリーニング検査
検査キットの費用は、1人あたりおよそ5,500円前後 所属する業界団体などによっては、助成金制度が利用できる場合もあります。
SAS精密検査
精密検査は1泊入院となるため、医療機関により金額は異なりますが、健康保険適用後の3割負担でおおよそ3〜5万円程度が一般的です。
5. スケジュール感
SASスクリーニング検査の実施は事前に専門検査機関とのスケジュール調整が必要です。発注からキットの発送までは、検査機関によりますが通常数週間〜数カ月かかることがあります。キットの貸出期間は3日〜2週間程度、測定後は回収・解析を経て、結果が返却されるまでにおよそ4週間を要します。
当NPOではご発注から最短1週間でキットの発送が可能です。貸出期間は2週間で対応しており、スピーディな検査実施が求められる法人様にもご活用いただいています。
6. 結果をどう活かす?社内体制づくりのポイント
結果説明会・健康指導
検査結果を受け取った直後は意識が高まっていることも多く、従業員に対し検査結果の見方や生活習慣改善のポイントなどを説明し、健康意識を高めます。
精密検査・治療への誘導
精密検査が必要と判定された従業員には、速やかに医療機関での受診を促します。保険適用の内容についてもわかりやすく説明し、心理的・経済的ハードルを下げる工夫が求められます。
※就業規則等で社内フローを整備している場合は精密検査の受診がスムーズに進む傾向にあります。
フォローアップ体制の構築
国交省では、3〜5年に一度の定期的なスクリーニング検査を推奨していますので、来年以降のSASスクリーニング検査計画を立案します。人数が多い場合は毎年1/3ずつ実施するなど、会社に合った運用を推奨しております。
なおSAS治療中の方は必ずしもSASスクリーニング検査を行う必要はありませんん。代わりに継続した治療の実施確認が重要となります。
6. まとめ
企業においてSAS対策(SASスクリーニング検査)を導入することは、**「SASリスクを抱える社員を早期発見し、重大事故や健康被害を未然に防ぐ」**という大きな意義があります。導入には一定のコストや労力を要しますが、長期的にはリスクの低減と従業員の健康維持に大きく貢献する取り組みです。
当NPOでは標準的な運用事例のご用意や、個社別のご事情に配慮したSAS計画のアドバイスも可能です。お気軽にご相談ください。


