【保存版】事業用自動車の運転者の健康管理マニュアル|要点整理
- 2025年12月19日
- 読了時間: 10分
出典:国土交通省「事業用自動車の運転者の健康管理マニュアル」(平成22年7月策定/平成26年4月改訂)
加工してNPO法人睡眠健康研究所が作成。
本ページは上記健康管理マニュアルの読みやすさを意識した要点整理版です。実際にご利用される場合は必ず原典をご確認ください。
【保存版】事業用自動車の運転者の健康管理マニュアル|要点整理

目次 |
はじめに
本マニュアルは、事業用自動車の運転者の健康状態に起因する事故の防止に向けて、次の点を中心に内容を反映したものである。すなわち、疾病リスクを低減するための平時からの健康増進をいかに推進するか、健康診断等に基づく健康管理と就業上の判断・対処をどのように実施すべきか、乗務前の点呼等における健康状態の確認と乗務可否の判断をいかに行うべきか、そして乗務中に健康状態に問題が生じた場合の対処をいかに行うべきかである。
また、本マニュアルは、旅客自動車運送事業運輸規則および貨物自動車運送事業輸送安全規則に基づき、運転者の健康状態の把握、乗務判断等に関する事項の解釈および運用の具体的方法を示すものである。
なお、本マニュアルで述べる対策の一部は、事業用自動車に従事する関係者のみならず、自家用車や社用車を利用する一般ドライバーや企業にも活用可能な内容となっており、広く理解が進むことで自家用車を含めた交通事故の防止に貢献することを期待するものである。
第1章 健康管理と健康起因事故防止の重要性
1.運転者の健康状態に起因する事案の報告件数の推移
自動車事故報告規則に基づく健康起因事故は、増加傾向が指摘されており、平成21年から平成24年の死亡した運転者は143名にのぼり、脳、心臓疾患が全体の8割を占める。一方で、事故原因の特定に至らず失神・めまい・不明とされている潜在的な健康起因事故、および健康起因以外の事故として報告されている可能性も指摘される。
なお、健康起因事案を起こした運転者については、日本人平均に比べ健康関連指標の数値が悪いことが判明している。
2.疾病発症のメカニズムと運転に影響する主な疾病への対処
予防予見が困難な疾病や生活習慣と因果関係の強くない疾病のほか、生活習慣の悪化の結果として発症するものがあり、早期の対策で未然予防可能な疾病も多くある。
この場合
①生活習慣、就労環境が悪化
②健康状態が悪化しハイリスク化
③悪化が進行し病気を患う
④適切にコントロールできなくなり運転に影響を与える症状が発症
⑤発症の結果事故に至る
というメカニズムとなる。
影響を与える主な眼疾患/神経疾患/脳血管疾患/心臓疾患/睡眠障害/呼吸器系疾患/消化器系疾患/感冒・アレルギー疾患/精神疾患などがあげられる。
運輸交通業における労働者の定期健康診断の有所見率は全産業平均に比べ、10ポイント以上高く64%に及ぶ。 そのため、疾病を患う前に労務条件や生活習慣を良好にし、疾病リスクのより上流で健康管理に努めることが健康起因事故防止に非常に重要である。
日常的な生活習慣の改善に加え、早期把握のためヘルスケア技術やスクリーニング検査による支援、医師の所見の活用。また被害軽減のための先進安全技術の導入などハード対策を有効に組み合わせていくことが必要となる。
第2章 健康起因事故防止対策の基本的な考え方
1.あらゆるリスクを、リスクが小さなうちに、できるだけ上流で摘み取る
安全を経営課題の最優先とし、次に自発的な健康管理と健康増進、健康状態の確認ときめ細やかな労務管理を行うことも求められる。 加えて、疾病・過労原因の早期発見など必要な環境整備などを平時から取り組んでいくことが有効である。
2.万が一の場合でも、乗客や他の交通の安全を確実に確保する
予防が可能な疾病もあれば、困難な疾病もある。 したがって、万が一の体調急変、意識喪失等が生じた場合に安全確保のためハード面の対策を組み合わせることが必要となる。 健康状態の確認については各種計測器を用いるほか、運転中では運転者の状態を把握する、運転操作や車両挙動の異常検知、さらには衝突被害軽減ブレーキなどハード対策も有効である。
3.自発的取組みの後押しと構造的な問題改善への取組み
健康管理の取組みが、すべての関係者にプラスの影響を与える正のスパイラルを創出することが重要である。 また、自発的な取組みを促しつつ、運転者不足や不規則勤務といった業界課題の状況改善を図るためには、必要な方策を着実に推進していくことが求められる。
第3章 疾病リスクを低減するための平時からの健康増進
疾病リスクを低減するために健康管理・増進を実践するためには、安全を経営の最優先課題と位置づけることが必要である。
そのうえで、運転者への指導、社内環境の整備、安全分野への投資などに取り組むことが求められる。同時に、運転者自身がプロ意識と安全意識を持ち、健康管理・増進に努める姿勢が重要である。
具体的な取組みとしては、生活習慣の改善が重要である。とりわけ「運動」「食生活」「禁煙」が厚生労働省からも示されており、運転者だけでなく家族の支援や機器の活用も有効な手段とされている。
第4章 就業、乗務及び運行における判断と対処
第4章は、就業(雇入・定期)→乗務前(点呼)→乗務中(運転時)の三段階で乗務可否の判断と対処を記載しています。非常に重要な章になっており、本文全体の約半分を占めます。ここでは要点を整理します。
記載されている法令上の義務の一覧
健康診断の義務付け、健康状態の把握、疾病等のある乗務員の乗務禁止
運行管理者による点呼実施
運転者の適性診断
運行管理者の講習
緊急時の体制整備
健康状態の報告義務
乗務判断と対処は以下の3つに大別
就業上における判断・対処
1.1. 運転者の健康状態の把握
1.2. 就業上の措置の決定
乗務前における判断・対処
乗務中における判断・対処
以下、この乗務判断の対処について詳しく解説されています。
1.就業における判断・対処
1.1.運転者の健康状態の把握
(1)定期健康診断の結果を踏まえた健康状態の把握(義務)
雇入時および定期の健康診断を実施し、結果を把握する。
異常の所見がある場合は、医師から運転者の意見を聴取し、健康診断の医師の意見欄に記入を求める。所見に応じて再検査・精密検査・治療を受けさせ、結果を把握し、運転業務に関する医師の意見(乗務可否・配慮事項等)を聴取する。
要注意・要観察の所見についても、必要な配慮と経過の把握を行い必要に応じて改善指導、医師の診断を受ける。
以下さらに詳細が記載されています。
二次健康診断等給付
医師からの意見聴取の際の配慮事項
産業保健活動総合支援事業
検査等の結果及び医師の意見の聴取方法
(2)一定の病気等に係る外見上の前兆や自覚症状等による疾病の把握(義務)
一定の病気とは?
脳・心臓疾患
統合失調症
てんかん
再発性の失神
無自覚性の低血糖症
そううつ病
重度の眠気の症状を呈する睡眠障害(SASはここに含まれます)
認知症
アルコールの中毒(者)
事業者はこれらの前兆や自覚症状の確認、ESS(SASで使用される眠気テスト)や適性診断などから総合的に判断し、医師の判断により検査を受診させ、意見を聴取する必要がある。
(3)主要疾病に関するスクリーニング検査による疾病の把握(推奨)
前兆や自覚症状が無い運転者も含め、主要疾病にはスクリーニング検査を実施し早期発見に努めることが望ましい。スクリーニング検査により必要に応じ検査を受診させる必要があり、その結果乗務にかかる意見を医師から聴取する必要がある。
主要疾病に関するスクリーニング検査の例
人間ドック(施設による)
脳ドック
睡眠時無呼吸症候群(SAS)スクリーニング検査
心臓疾患にかかる検査
(4)その他の疾患等の把握(推奨)
把握することが望ましい疾患
高血圧
不整脈
消化器系疾患(意識消失を伴うもの)
糖尿病
アレルギー性疾患
これらは、運転者からの自己申告を受け状況を把握するとともに、医師に対して乗務にかかる意見を聴取することが望ましい。
1.2.就業上の措置の決定
(1)就業上の措置の決定(義務)
事業者は、医師からの意見を勘案し、乗務継続、業務の転換、乗務時間の短縮、夜間乗務の回数削減等を決定する。差別的な扱いを行ってはならない。
(2)医師等による改善指導(義務)
措置後、医師等による改善指導または保健指導を受けさせ継続的に把握する。改善が認められた場合は再度医師の診断や面接指導を行い、運転業務に関する意見を聴取する。
(3)運転者の健康管理(推奨を含む)
健康管理環境の整備を行い、健康情報の整理、点呼記録簿での運行管理者による管理、健康管理ノートの作成などにより健康情報の保管確認が容易になるよう整備する必要がある。
2.乗務前の判断・対処
(1)乗務前点呼における乗務判断(義務)
乗務前の点呼において、安全な運転をすることができないおそれの有無を確認する。 以下の手順・判断目安に従い健康状態を判断し、乗務可否を決定する。
乗務前点呼における手順及び乗務可否の判断目安

その他疾患等を治療中の運転者に対する確認事項

(2)点呼の結果、運転者が乗務できない場合の対処
代わりの運転者の手配方法等の明確化(義務)
乗務できなかった運転者への対処(推奨)
3.乗務中の判断・対処(義務)
乗務中に前兆が出現した場合、無理に運転を継続せず安全な場所に停止し、速やかに運行管理者へ報告することが求められる。 さらに、実際に体調が悪化した場合や、脳・心臓疾患の前兆や自覚症状が現れた場合には、即座に運転を中止し、同様に運行管理者へ報告する必要がある。

4.健康増進・管理を支援し確実なものとするための工夫
まず、機器を活用した健康増進や疾病の早期発見は、健康起因事故の予防に有効である。
日常の健康管理および運行管理により、リスクを小さい段階で摘み取る、運転中のリスク増大時も被害を最小限に抑えるための対策を講じるなど、リスクの上流から下流まで対応することが望ましいため、段階的に整理する。(詳細は原典参照)
機器の例:健康状態等を把握するための機器
睡眠計
携帯型自動血圧計
携帯型血糖値計
携帯型心電計
ドライバー個人が、簡単に日々の健康状態をチェックするシステム
ネットワーク型デジタルタコグラフ
ITを活用した遠隔地における点呼機器
運行中における運転者の疲労状態を測定する機器
衝突被害軽減ブレーキ
【別紙】(概要)
「自動車の運転に支障を及ぼすおそれがある一定の病気等とその前兆・自覚症状」についてまとめています。
脳疾患
心臓疾患
統合失調症
てんかん
再発性の失神
無自覚性の低血糖症
そううつ病
睡眠障害(SASはここに含まれます)
認知症
アルコール中毒
【参考資料】(概要)
参考資料1 運転に支障を及ぼす脳・心臓疾患の概要
参考資料2 運転者に求められる健康状態及び適性試験合格基準(道路交通法関係法令抜粋)
参考資料3 健康状態の実施(労働安全衛生法関係法令抜粋)
参考資料4 自動車運送事業者における健康管理にかかる関係法令
平時の健康増進/就業判断/乗務前点呼/乗務中対処に関する補足図表・解説が収載され、教育・研修での参照が想定されています。
【巻末資料(様式集)】(概要)
巻末資料 1 運転者の健康管理支援に関する情報提供依頼書の様式
巻末資料 2 運転者の運転業務に関する情報提供書の様式
巻末資料 3 運転者の運転業務に関する意見書(産業医向け)の様式
巻末資料 4 面談記録票
巻末資料 5 乗務前の健康状態確認事項(一般事項)
巻末資料 6 乗務前の健康状態確認事項(特別事項)
SAS対策の仕組みを整備したいとお考えの方は、お気軽にご相談ください。

