判例から考えるSAS対策 ― 眠気の自覚だけに頼らない検査を―

― 眠気の自覚だけに頼らない検査を ―
睡眠時無呼吸症候群(SAS)との関連が疑われた事故・裁判事例では、運転者が事故当時の状況について、さまざまな説明や主張をしています。
本記事では、それらの説明を紹介し、企業の健康管理の一環としてSASスクリーニング検査を取り入れる意義を考えます。
本人が気づきにくいSASの眠気
SASでは、睡眠中に呼吸が止まったり弱くなったりすることで睡眠が妨げられ、日中の眠気や疲労感などにつながります。しかし、必ずしも本人が眠気を感じるとは限らず、疲れを仕事の忙しさによるものと捉えてしまう場合もあります。
当法人に検査をご依頼いただいている企業のうち、全ドライバーを検査対象としている企業の受検者データを集計したところ、約11.5%が要精密検査と判定されています。
※これは医療機関で詳しく調べる必要があるとされた方の割合であり、SASと確定診断された方の割合や、運輸業全体の割合を示すものではありません。集計対象や詳しい結果については、当法人のSASスクリーニング検査統計をご覧ください。
事故・裁判事例に見る運転者の説明
SASとの関連が疑われた交通事故を扱う論文では、運転者による次のような説明や主張が紹介されています。
運転者の説明・主張の要旨
・高血圧症の薬の影響で意識がなくなったと説明し、その後、SASの影響を主張した(事例1) ・事故前後の記憶がないと説明した(事例2) ・くしゃみをして気づくと事故が起きており、前後の記憶がはっきりしないと説明した(事例4) ・赤信号に気づいたが、SASの影響で予兆のない眠りに陥ったと主張した(事例8) ・SASの影響で意識なく停車し、追突に気づかないまま走行したと主張した(事例9) ・一瞬、居眠りをしてしまったと説明した(事例11) ・事故直前から記憶がないと説明した(事例12) ・SASの影響で突然眠ったと主張した(事例13) |
※論文に記載された説明・主張を当法人が要約したものです。括弧内の数字は、事故・裁判事例を整理した記事の事例番号に対応しています。
これらの説明が、そのまま裁判で認められたわけではありません。眠気を感じながら運転を続けたことについて過失が認められた事例や、SASと事故との因果関係が認められなかった事例もあります。
一方で、運転者自身が、突然眠りに陥った、急に意識がなくなったという趣旨の説明・主張をしている点は注目すべきところです。国土交通省のマニュアルでも、SASでは「運転中に突然意識を失うような睡眠に陥ることもあります」と注意を促しています。個々の事例がこれに該当するとは断定できませんが、こうした運転者の説明は、眠気の自覚だけに頼らないSAS対策の必要性を考えるきっかけになります。企業の健康管理では、事故が起きる前からSASの可能性を確認できるよう、日頃から検査を受ける機会を用意しておくことが大切だと考えます。
眠気の自覚だけに頼らない検査を
眠気やいびきなどの自覚症状がある方だけを、検査対象としていないでしょうか。
国土交通省のマニュアルでは、自覚症状の有無などで対象者を絞り込まず、機器によるスクリーニング検査を行う考え方が示されています。「眠気はありません」という回答だけで、SASの可能性を否定しないことが重要です。
当法人のSASスクリーニング検査では、問診に加え、パルスオキシメータで睡眠中の血中酸素の変動などを測定し、精密検査の必要性を評価します。本人の感覚だけでは分からない情報を、機器による測定で確認するための検査です。

この検査だけでSASの診断が確定するものではありませんが、必要な方を医療機関での精密検査につなげるきっかけになります。
当法人のSASスクリーニング検査について
日々の体調確認とあわせてSASスクリーニング検査を行うことは、ドライバーの健康と安全を支える取り組みのひとつです。自社のSAS対策を見直す際には、SASスクリーニング検査の導入もご検討ください。

